2019年2月26日

2011年から始まって、今度で9回目となる「瑞沢川にサケの稚魚を放流する会」の放流事業。
今年は2月18日に開催されました。当日は天候も良く、気温も10℃前後でサケの稚魚を放流するには最高のコンディションでした。

サケがなぜ生まれ故郷の川に戻ってくるのか、いろいろな研究をされているようですが、サケの遡上は「母川回帰」と呼ばれ、サケが母川の匂いを記憶して嗅覚によって、川の微妙な匂いを嗅ぎ分けているからだと言われています。最近では川の景色を視力で記憶しているとの研究成果もでているようです。いずれにしても、生まれた川に何年か後に戻ってきてくれるサケの生態に、自然界の不思議を感じました。
この活動は毎年町の各方面の方々が、様々な形で尽力されています。

「瑞沢川にサケの稚魚を放流する会」の松本敏男会長(下写真)は、「今年は町内だけではなく、近隣の保育園の園児も放流に参加してくれて、少しずつではあるがこの活動の認知度が広がってきているのではないか」と、仰っていました。2009年に瑞沢川でサケの遡上が確認されたことを受けて、町民の有志が2010年にこの会を立ち上げ、稚魚の放流を開始、そして2015年には産卵する様子なども観察され、3年続けて体長60~70センチの魚体も確保されています。昨年11月も4匹の遡上が目視されていました。

産卵を終えた雄のサケを剥製にして、「ホッチャレくん」と名前をつけ町の公民館に展示しています。
稚魚放流に参加した児童生徒にとっては、生命の豊かさや、たくましさ、愛おしさなどを改めて体感する貴重な経験になったことだと思います。
また町教育長は年に3回サケ通信を発行していて、サケのその時々の進捗状況などをお知らせしてくれます。町の教育委員会では、放流する川の水質検査も実施しています。来年に向けて放流会場の周りに河津桜の植樹等も行われ、来年10回目の放流のための環境整備に余念がありません。少しずつ会に携わる方々が増えて、盛り上がってきています。
サケの稚魚は同会が受精卵を購入し、育ててくれる一般家庭を公募して配布しています。最近は育て方のマニュアルと機材もセットにして貸し出してくれます。今年は47軒が参加し、会員のほか、公民館や学校、合わせておよそ6000匹を育てました。

上の写真はたまごから孵化したばかりのところ。
孵化してもいくらのような袋はついたまま、動き回ることはありません。袋の中の栄養が体に吸収されてしぼんだら、魚のように動き回ります。

私のような初心者でも育てられそうなので、来年は記念すべき10回目でもありますし、育成にチャレンジしてみようかと考えています。
さらに今年は大々的に「サケ回帰南限の町 睦沢」と謳い、睦沢中学校芸術部の生徒が看板を製作し、町の有志の方々が設置しました。
その様子も含めて、チバテレビや千葉日報、毎日新聞等、多くのメディアにも取り上げていただき、町内の園児、小中学生、一般の方ら300名と6000匹の稚魚を「元気に戻ってきて」と願いをこめて放流する姿が報じられました。
・毎日新聞・サケ放流
「回帰南限」睦沢で稚魚放流 小中学生ら6000匹
・「帰ってきて」と願い込め サケの稚魚6000匹放流 睦沢・瑞沢川で町民300人
最後に、サケが川の匂いや景色を記憶して戻ってくるように、この町で生まれて育ち町外に学業や仕事で出て行ってしまっても、心の中に自分の故郷は睦沢町だということを、忘れずにいてほしいと思います。
この記事は「むつざわに来てね」に掲載された記事の転載です。(2021年3月加筆修正)
取材・文:むつざわ未来ラボ 飯塚裕美
写真:むつざわ未来ラボ 小林かおり